訪問看護における「24時間対応体制加算(医療保険)」とは?

訪問看護ステーションでは、在宅で生活するご利用者様に対して訪問看護サービスを提供しております。日々の定期訪問だけでなく、ご利用者様に何か緊急事態が発生した場合には迅速かつ適切な対応をすることとなります。

ひとくちに「緊急事態」といいますが、これは日中に限ったことではありません。夜間・深夜、早朝にも発生します。訪問看護ステーションでは、24時間起こりうる緊急事態に対応できるよう、オンコールを担当する者・夜間対応を行う者等、毎月綿密にシフトを組んでおります。

日中であれば人員も比較的手厚いため、多少は対応しやすいですが、夜間・早朝・深夜はそういうわけにもいきません。訪問看護ステーションでのサービス自体は止まることなく、24時間体制を構築しているわけで、毎日奮闘されている訪問看護師の皆様には心より敬意を表します。

今回は、訪問看護サービスにおいて非常に重要である「24時間対応」の意義や実態、医療保険での評価(加算報酬や算定要件など)について解説します。

訪問看護サービスにおける「24時間対応」の役割と現状

24時間対応体制加算・緊急時訪問看護加算の解説の前に、まず訪問看護サービスにおける24時間対応の現状や、どのような役割を担っているかについて紹介します。

ご利用者様やご家族より、 24時間用のオンコール電話に連絡が入ります。オンコールを担当する訪問看護師は、連絡や相談の内容を丁寧にお聴きします。前述の通り、このような連絡は日中にかかってくるとは限らず、夜間・早朝・深夜にわたることもあります。

なかには相談者様が混乱されているケースもありますので、まずは気持ちを落ち着かせることが必要です。状況を的確に理解するために、訪問看護師はご利用者様やご家族の精神面を支える等、様々なことを行っているのです。

ご相談内容をしっかり理解し、訪問看護師はその後どう対応すべきかを考え、迅速かつ適切な判断を行います。看護師で対応可能と判断した場合は、電話にてアドバイスして終了することもあれば、必要に応じてご自宅を訪問し、相応の対応を行います。

訪問看護師では対応が不可能と判断した場合は、訪問診療の先生に連絡し指示を仰ぎ、緊急往診を検討していただくケースもあります。それも電話で判断することもあれば、実際にご自宅を訪問した上で判断する場合もあります。

相談内容についてよくある事例

・膀胱留置カテーテルのトラブル(閉塞、血尿、自己抜去、ハルンパックの破損等)

・体調不良(嘔吐あり、発熱、食欲不振等)

・経管栄養のトラブル(経管の抜去、漏れ等)

・喀痰吸引

・排便トラブル

24時間対応体制加算(医療保険)の内容・報酬額・算定要件とは

24時間対応体制加算は、訪問看護療養費(医療保険)に付随する加算です。

具体的には「利用者またはその家族などから電話などで看護に関する意見を求められた場合に、24時間常時対応できる体制が整っている事業所」が算定できる加算です。在宅で療養している利用者や家族にとっては、とても安心できるサービスだと言えます。

2024年度診療報酬改定では、24時間対応体制加算の区分の見直しが行われました。

算定要件や施設基準等の変更点などについて、改めてしっかり理解する必要があります。

☆報酬額

24時間対応体制加算は、2024年診療報酬改定により、下記の2区分が設定されることになりました。

24時間対応体制加算イ  6800円(月1回算定)

24時間対応体制加算ロ  6400円(同上)

報酬額はこれまで月1回6,400円でしたが、2024年度の診療報酬改定により「24時間対応体制における看護業務の負担軽減の取り組みを行っている」事業所に対して、より高い報酬算定できる形となりました。

対象者

訪問看護療養費を算定するすべての利用者が対象となり得ますが、本人(ご家族)に加算算定について十分な説明を行い、了承を得なければなりません。

同意が得られない場合は、当該加算を算定することができなくなります(後述)。

算定要件

24時間対応体制加算を算定するには、以下の算定要件を満たす必要があります(一部再掲)。

・利用者やその家族から電話等により看護に関する意見を求められた場合に常時対応できる体制を整えていること
・必要に応じて緊急時訪問看護を行う体制があること
・地方厚生(支)局長に届け出ていること
・利用者に対して、訪問看護ステーションの体制を説明し、同意を得ること
・24 時間対応体制加算に係る指定訪問看護を受けようとする利用者への説明に当たっては、訪問看護ステーションの名称、所在地、電話番号、時間外・緊急時の連絡方法を記載した文書を交付すること
・利用者やその家族からの連絡・相談に応じた場合や緊急時訪問看護を行った場合、その日時と内容、対応状況を訪問看護記録書に記録すること

体制上は算定要件を満たしていても、厚生局への届出がないと算定することができません。

届出をせずに加算を算定し、国保連や支払基金に否認されるケースが意外に多いので注意しましょう。

2024年診療報酬改定において新たに創設された加算イには、「看護業務の負担軽減の取り組み」が必須になったわけですが、どのような内容なのでしょうか?

以下にまとめましたのでご覧くださいませ。

「24時間対応体制における看護業務の負担軽減の取り組みを行っている場合」とは

1つ目の区分である「24時間対応体制における看護業務の負担軽減の取り組みを行っている場合」を算定するには、以下の1または2を含む2つ以上の取り組みを行っていることが届出基準となります。

今後、より上位の加算の取得を検討されるにあたっては、十分留意しなければなりません。

1.夜間対応を行った翌日の勤務間隔を確保している
2.夜間対応に係る勤務の連続回数が2連続(2回)までである
3.夜間対応後に暦上の休日を確保している
4.夜間勤務のニーズを踏まえた勤務体制を工夫している
5.ICTやAI、IoT等の活用による業務負担軽減を行っている
6.オンコール当番を担当する者への支援体制を確保している

算定にあたっての留意事項

24時間対応体制加算の算定にあたっては、以下に留意する必要があります。

・1人の利用者に対して1つの訪問看護ステーションだけが算定可能であるため、他の訪問看護ステーションから24時間対応体制加算に係る指定訪問看護を受けていないか確認する必要があること
・1人の利用者に対して介護保険の緊急時訪問看護加算と同月に算定できないため、他の訪問看護ステーションから緊急時訪問看護加算を算定する訪問看護を受けていないかも確認する必要があること
・医療資源の少ない地域に所在する訪問看護ステーションでは、2つの訪問看護ステーションが連携することによって24時間対応体制加算の要件を満たすことで届出することがあるが、この場合でも24時間対応体制加算は1つの訪問看護ステーションにおいてのみ算定が可能であること
・介護保険の「緊急時訪問看護加算」との併算定ができないこと

まとめ

今回は、訪問看護の「24時間対応体制加算」について取り上げました。

介護保険の緊急時訪問看護加算と同様、6月からの報酬改定で大きく変更となっております。

訪問看護ステーションにおいて、24時間のサービス体制を構築することは容易なことではありません。国もそのことは認識しており、取り組み次第で高い報酬額が算定できるよう配慮はしていますが、訪問看護師自体がまだまだ足りないこともあり、今後も国を挙げての対策が必須です。

一方で、訪問看護ステーションの側においても、業務改善等の対策は必要です。

いかにして看護師等の負担を軽減できるか・・・簡単なことではありませんが、このことに真剣に取り組むことが職員の定着につながるように思います。 今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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