訪問看護における「ターミナルケア加算」とは?

こんにちは!

訪問看護において、ご利用者様の終末期のケアを行うケースは非常に多いことと思います。

ターミナルケアとは、医師によって余命数週間から数か月と診断され、治療によって回復の見込みがないと判断された患者に対し、終末期のケアを行うことです。ご本人やご家族に説明の上、延命治療や心身の機能の維持を目的とする治療は敢えて行わず、症状の緩和や心のケアを中心に据えた看護ケアを行います。これを「人生の残り時間を自分らしく過ごすためのケア」ということもあります。

終末期において残された時間に利用者本人やご家族の意思を尊重し最期までその人らしく過ごせるよう医療体制を整え、ターミナルケアを実施した訪問看護ステーションには、その実施の評価(対価)として加算を算定することができます。

今回は「ターミナルケア加算」の算定要件や留意点などについて解説します。

なぜ「ターミナルケア」が重要なのか

なぜ「ターミナルケア」が重要なのでしょうか。


それは人間として、残りの余命を少しでも心穏やかに過ごせるように痛みや不安、ストレスを緩和し、患者様のQOL(クオリティオブライフ=自分らしい生活の質)を保つことが大切であると考えられるからです。

人間には「尊厳」があり、何人もそれを侵すことはできません。私たちはそのことを重々認識してケアに当たっていく必要があるわけです。「ターミナルケア」は、イコール「人間の尊厳」「その人らしい最期」と言い換えてもよさそうです。

しかしながら、「終末期」の判断は簡単ではありませんし、安易に取り扱うことはできないものです。なぜなら、人によっては「何が何でも生き永らえてもらいたい」ということで延命治療を望まれる方もおり、それも尊重しなければならないためです。したがって、ターミナルケアを開始するには医師が利用者様・ご家族に対して十分な説明を行い、納得していただかなくてはなりません。そして、様々な社会資源を投入して終末期を支えていかなくてはなりません。

「ターミナル(終末)期に突入した」という定義は、医師の考え方によっても意見が分かれるところであり、非常に判断が難しいところではありますが、一般的には「病気の治癒が見込めず積極的な治療が行えなくなったとき」、あるいは「寝たきりで食事がとれなくなったとき」などが一つの目安となるようです。

ターミナルケアの内容は大きく分けて3つあります。

身体面に対するケア

主として痛みなどを緩和するためのケアです。
体の清拭や身だしなみを整える、床ずれの防止、食事ができなくなった場合の点滴対応なども含まれます。

精神面に対するケア

患者様の不安や恐怖、ストレスなどを取り除き、心穏やかに過ごすためのケアです。
患者様(時にはご家族)の気持ちに寄り添い、傾聴し、家族や友人と過ごす時間や趣味を楽しむ時間などを設けたりすることを示します。

社会面に対するケア

ターミナルケアが長期間続くと、費用や関係各所とのやり取り、手続きなども大きな負担となってきます。主に家族にかかる介護・看護のストレスや、社会との関わりなどを手助けすることも重要になります。
これは医師だけでも、訪問看護師だけでも行うことはできません。ケアマネジャーやヘルパーさんなどの関係者との連携が必要不可欠となります。

「社会面に対するケア」は関係する方々との「チームケア」により、家族の話や悩みを聞くことや、支援制度の紹介、情報提供などを行うこととなります。

このように、ひとくちに「ターミナルケア」といっても、非常に複雑でかつ難しい対応が求められるのです。

国はかねてから「病院ではなく自宅(に準じる場所)で最期を迎える」ことを重要視しており、それを推進・評価するために「ターミナルケア加算・療養費」が設けられたということです。

このあと、介護保険・医療保険におけるターミナルケア加算(療養費)について、詳しくご説明します。

ターミナルケア加算(介護保険)の内容と留意点

介護保険での利用の場合には「ターミナルケア加算」という名称になります。

ターミナルケア加算は、在宅での看取りを推進するために、在宅で死亡したターミナル期の利用者様に対してターミナルケアを提供することを評価する加算になります。

報酬単位は2000単位でしたが、 2024年度介護報酬改定では、単位数が2,500単位に引き上げとなりました。

ターミナルケア加算は、死亡日および死亡日前の14日以内に2日以上ターミナルケアを行った場合に、上記の単位数の算定が可能となります。なお、当該加算は「要介護者」が対象であり、要支援者は算定できませんのでご留意ください。

算定要件

・24時間連絡できる体制を確保し、必要に応じて訪問できる体制を整備していること

・体制の届出を行っていること

・主治医との連携の下に、ターミナルケアに係る計画、支援体制について利用者とその家族に説明し、同意を得てターミナルケアを行っていること

・死亡日、死亡日前14日以内に2日(末期の悪性腫瘍等の特定の利用者については1日)以上ターミナルケアを行っていること
 ‐ターミナルケアの提供について必要な事項(以下の事項)が適切に訪問看護記録書に記録されていること
 ‐終末期の身体状症状の変化、それに対する看護に関する記録
 ‐療養や死別に関する利用者とその家族の精神的な状態の変化、それに対するケアの経過についての記
 ‐看取りを含めたターミナルケアの各プロセスにおいて利用者とその家族の意向を把握し、それに基づくアセスメントと対応の経過の記録

・ターミナルケアの実施にあたっては、他の医療関係者や介護関係者と十分な連携を図るよう努めること

上記の通り、事前の説明や細かいプロセスごとのケアを行い、記録もしっかり整える必要があります。

留意点

・在宅で死亡した利用者の「死亡月」に加算を算定する。ただし、ターミナルケアを最後に行った日が属する月と死亡した月が異なる場合には、死亡月に算定する。

・1人の利用者につき「1ヵ所の事業所等だけ」がターミナルケア加算等を算定できる。

・1つの訪問看護ステーションにおいて、医療保険、介護保険における訪問看護をそれぞれ1日以上実施した場合には、最後に実施した保険制度におけるターミナルケア加算等を算定する。たとえば、医療保険でターミナルケア療養費を算定した場合は介護保険のターミナルケア加算を算定できないこととなる

※ターミナルケア加算を算定した利用者については、他のサービスにおいて同様の加算を算定することはできません。たとえば、定期巡回・随時対応サービスや看護小規模多機能型居宅介護におけるターミナルケア加算、医療保険のターミナルケア療養費は算定できません。

ターミナルケア療養費(医療保険)の内容

ターミナルケアに関する評価は、介護保険だけでなく「医療保険」にも存在します。

医療保険の場合の名称は「訪問看護ターミナルケア療養費」といいます。

報酬額については下記をご確認ください。

訪問看護ターミナルケア療養費1 25,000円

訪問看護ターミナルケア療養費1は、在宅で死亡した利用者または、特別養護老人ホーム等で死亡した利用者のうち看取り介護加算等を算定していない利用者に対してターミナルケアを行うことで算定できます。

一般在宅やサ高住・住宅型有料老人ホーム(特定施設ではない)に入居されている方に対しては、上記「1」を算定することとなります。

訪問看護ターミナルケア療養費2 10,000円

訪問看護ターミナルケア療養費1は、在宅で死亡した利用者または、特別養護老人ホーム等で死亡した利用者のうち看取り介護加算等を算定していない利用者に対してターミナルケアを行うことで算定できます。

一般在宅やサ高住・住宅型有料老人ホーム(特定施設ではない)に入居されている方に対しては、上記「1」を算定することとなります。

訪問看護ターミナルケア療養費2は、特別養護老人ホーム等(下記参照)で死亡した利用者で、看取り介護加算等を算定している利用者に対してターミナルケアを行うことで算定できます。

《特別養護老人ホーム等とは》

指定特定施設
指定認知症対応型共同生活介護事業所
指定介護老人福祉施設
有料老人ホーム
軽費老人ホーム
養護老人ホーム
認知症高齢者グループホーム
特別養護老人ホーム

訪問看護ターミナルケア療養費の算定要件は以下のようになっています。

訪問看護ターミナルケア療養費の算定要件

・在宅または特別養護老人ホーム等で死亡した利用者(ターミナルケアを行った後、24時間以内に在宅以外で死亡した者を含む)に対して、ターミナルケアを実施していること

・死亡日及び死亡日前14日以内の計15日間に2回以上、訪問看護基本療養費または精神科訪問看護基本療養費を算定していること

・訪問看護ステーションの連絡担当者の氏名、連絡先電話番号、緊急時の注意事項等について利用者及びその家族に説明した上でターミナルケアを行っていること

・利用者が死亡した場所、死亡時刻等を訪問看護記録書に記録すること

※記録書に明記することは当然として、請求の際にも療養費明細書に「死亡日時」「死亡の場所」を明記しなければなりません。記載がない場合は返戻となります。

訪問看護ターミナルケア療養費の留意点

・在宅または特別養護老人ホーム等で死亡した利用者(ターミナルケアを行った後、24時間以内に在宅以外で死亡した者を含む)に対して、ターミナルケアを実施していること

・死亡日及び死亡日前14日以内の計15日間に2回以上、訪問看護基本療養費または精神科訪問看護基本療養費を算定していること

・訪問看護ステーションの連絡担当者の氏名、連絡先電話番号、緊急時の注意事項等について利用者及びその家族に説明した上でターミナルケアを行っていること

・利用者が死亡した場所、死亡時刻等を訪問看護記録書に記録すること

※記録書に明記することは当然として、請求の際にも療養費明細書に「死亡日時」「死亡の場所」を明記しなければなりません。記載がない場合は返戻となります。

訪問看護ターミナルケア療養費を算定する際は、同一の利用者について、他の訪問看護ステーションによる訪問看護ターミナルケア療養費の算定、保険医療機関による在宅患者訪問看護・指導料の在宅ターミナルケア加算または同一建物居住者訪問看護・指導料の同一建物居住者ターミナルケア加算の算定の算定がされていないことを確認する必要があります。


また、1つの訪問看護ステーションにおいて、死亡日及び死亡日の前14日以内に、介護保険制度における訪問看護と医療保険制度における訪問看護をそれぞれ実施した場合には、最後に実施した訪問看護が医療保険制度によるものである必要があります。

まとめ

今回は、ターミナルケアを行うステーションに対する評価として「ターミナルケア加算(療養費)」について解説いたしました。

基本的な意味合いはほぼ同じですが、介護保険と医療保険で微妙に取り扱いが異なります。

特に医療保険については、前述した通りレセプトに「死亡日時」「死亡場所」の明記が必要であり、こちらの記載がないために返戻になるケースもあります。

ターミナルケアは、「在宅での看取り」を推進する意味でも、人間の尊厳を維持することも含めて大切なものです。実際ステーション様においても積極的に取り組まれていることと思います。

ターミナルケアは簡単に行えるものではありません。是非ご利用者様やご家族に寄り添い、その人らしい最期が迎えられるようにしていただきたいですし、その対価として算定できる加算についてもしっかり理解していただけたらうれしいです。 本日も最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。

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