パーキンソン病:parkinson’s disease(PD)

パーキンソン病は、厚生労働省が指定する難病のひとつで、中高年以降に発症する神経変性疾患です。
現在、日本の有病者数は約18万人以上(発症率10万人に100~180人)と報告されており、65歳以上の高齢者に多く、性差としてはやや男性に多い傾向がみられます。
また、介護保険法施行令第二条にて、要介護認定の際の運用を容易にすることを目的に個別疾病名で記載されている特定疾患にも認定されています。
中脳黒質のドパミン神経細胞が変性・脱落したことにより、大脳基底核(線条体)でドパミン不足が発生。これにより基底核回路の調節障害が発生し、運動症状を主体とした神経症状を呈する神経変性疾患。
①主な運動症状
・安静時振戦
・微細運動障害:ボタンが留めにくい、字が書きにくいなど
・筋強剛(鉛管様、歯車様):手足の重たさや痛みなどがあり他動的に動かすとギシギシと抵抗が感じられる
・寡動/無動/動作緩慢:動作の開始時や方向転換時に時間を要する
・小刻み歩行:前かがみ姿勢、歩幅が狭い(特に方向転換時に発生)
・姿勢保持/反射障害:転倒リスク増大
・すくみ足:第一歩が出にくい
・突進歩行:歩き出すと私大に小走りになり止れなくなる
【4大徴候】
1.安静時振戦
2.筋強剛
3.寡動/無動
4.姿勢反射障害
※軽度左右差あり
②非運動症状
・自律神経障害:便秘、排尿障害、起立性低血圧など
・精神症状:抑うつ、不安、幻覚、妄想など
・認知症
・睡眠障害、嚥下障害
Hoehn & Yahr分類
0度:パーキンソニズムなし
1度:一側性パーキンソニズム
2度:両側性パーキンソニズム
3度:軽~中等度パーキンソニズム。姿勢反射障害(姿勢保持障害)あり。日常生活に介助不要
4度:高度障害を示すが、歩行は介助なしにどうにか可能
5度:介助なしにはベッド又は車椅子生活
生活機能障害度
1度:日常生活、通院にほとんど介助を要しない。
2度:日常生活、通院に部分的介助を要する。
3度:日常生活に全面的介助を要し、独立では歩行起立不能。
※難病指定の場合、Hoehn-Yahr重症度分類3度以上かつ生活機能障害度2度以上を対象とする。
~服薬管理と運動習慣の確立~
【特徴】
・片側優位の症状
・軽度の姿勢障害
【在宅ケアの要点】
・服薬時間の遵守(L-ドパの効果維持)
・軽運動・ストレッチの習慣化
・転倒予防として住環境の軽微な調整
・家族への疾患理解の支援
~転倒・すくみ足への具体的対策~
【特徴】
・転倒が多発
・ADLに軽度~中等度の介助が必要
【在宅ケアの要点】
・転倒リスクアセスメントと予防(手すり設置、段差解消)
・「すくみ足」対策としてリズム運動(声掛け・音楽)
・薬効オン・オフ現象の記録と医師への報告
・家族への介助方法指導
~嚥下障害・精神症状への包括的対応~
【特徴】
・歩行は介助下
・認知障害や嚥下障害の進行が多い
【在宅ケアの要点】
・嚥下機能評価(STとの連携)と誤嚥予防
・食事形態の工夫(とろみ、刻み食)
・褥瘡予防のための体位変換
・精神症状への対応(幻覚・妄想時の安心対応)
・介護者への心理的サポート
~緩和ケアとACPによる生活の質の確保~
【特徴】
・ADL全介助
・嚥下障害高度
・呼吸障害の出現
・感染リスク増大
【在宅ケアの要点】
・誤嚥性肺炎予防(口腔ケア、吸引、体位管理)
・経管栄養導入に関する医師・家族との調整
・疼痛・不快症状への緩和ケア
・在宅療養継続の可否を含むACP(アドバンス・ケア・プランニング)の実施
①頭部CT・MRI
・合併症がなければ「異常は認められない」
※水頭症、慢性硬膜下血腫、脳腫瘍、多発性脳梗塞、多系統萎縮症、進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症などの除外のために実施
②SPECT(単光子放出型コンピュータ断層撮影)
・脳の局所神経活動の評価に応用:パーキンソン症候群(多系統萎縮症、進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症などパーキンソン病の症状を呈する疾患)との鑑別にも有用
・血流低下や広がりの経時的変化によって病態把握にも有用
③PET:陽電子放出型断層撮影
・グルコース代謝をみるFDG‐PETにて、被殻後概則のグルコース代謝亢進が確認可能
④MIBG心筋シンチグラフィー
・高率で心臓のMIBG集積の低下がみられる
①薬物療法
・レボドパ(商品名:ドパストン®など)
・レボドパ + カルビドパ配合(商品名:メネシット配合錠)
・レボドパ + ベンセラジド(商品名:マドパー配合錠)
・ドパミンアゴニスト(ビ・シフロール®、レキップ®)
・ドパミン受容体作動薬:皮膚貼付(商品名:ニュープロパッチ)
・MAO-B阻害薬(エフピー®、アジレクト®)
・COMT阻害薬(コムタン®)
・抗コリン薬、アマンタジン(シンメトレル®)
など
✅要チェック
‐長期治療による弊害‐
・wearing-off現象:レボドパの薬効時間が短くなる
・delayed-on現象:レボドパを飲んでも効果の発現が遅い
・no-on現象:レボドパを飲んでも効果が得られない
・on-off現象:レボドパの服薬時間に関係なく症状の良し悪しがみられる
・dyskinesia(ジスキネジア):不随意運動
・幻覚・妄想
② 外科的治療
※薬物コントロールが困難もしくは進行期で薬物療法が限界に達した場合に検討
・脳深部刺激療法(DBS):視床下核や淡蒼球などの脳の深部に刺激電極を留置し、前胸部の皮下に植込んだ神経刺激装置とをケーブルで繋いで電気刺激を与える方法。神経核の過剰な細胞活動を抑制し、不随意運動症を治療する目的で実施される。

在宅では特に下記のようなことで悩まれる患者・家族が多いため、それぞれ看護師としてどのように介入していけるかを検討することがより質の高い看護へと繋がります。
• 服薬忘れ・副作用対応:服薬カレンダー、ICTアプリの導入
• 転倒不安:ベッド周囲の環境整理、ナイトライト設置
• 嚥下障害:食事介助法の指導、STとの連携
• 介護負担:レスパイトケア、短期入所の活用
• 社会資源の利用:難病医療費助成制度、訪問リハビリ、デイサービスの調整
●有賀 洋文 . パッとひける 医学略語・看護略語 . 株式会社 照林社 , 2014 .
●安達 洋祐 . ナースに知ってほしい100の病気 . 株式会社 メディカルレビュー社 , 2013 .
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●製薬企業各社 . Sifrol(プラミペキソール)/プラミペキソール製剤 添付文書・製品情報 . KEGG 医療用医薬品 . 2025年10月8日 . https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med_main
●製薬企業各社 . ニュープロパッチ(ロチゴチン貼付剤) 添付文書・製品情報 . KEGG 医療用医薬品 . 2025年10月8日 . https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med_main
●製薬企業各社 . コムタン錠(エンタカポン) 添付文書(PINS/JAPIC) . PINS(日本医薬情報センター) . 2025年10月8日 . https://pins.japic.or.jp/pins/
●製薬企業各社 . アマンタジン製剤 添付文書・製品情報(腎機能に関する注意等) . KEGG 医療用医薬品 . 2025年10月8日 . https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med_main
●製薬企業各社 . セレギリン(MAO-B阻害薬) 添付文書・製品情報 . KEGG 医療用医薬品 . 2025年10月8日 . https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med_main
●京都大学化学研究所 KEGG 医療用医薬品データベース . 各薬剤の効能・用法・製剤情報(メネシット、マドパー、コムタン、ノウリアスト、アジレクト 等) . KEGG 医療用医薬品 . 2025年10月8日 . https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med_main
●日本医薬情報センター(JAPIC) . 各薬剤の添付文書 PDF(総合参照) . PINS(JAPIC) . 2025年10月8日 . https://pins.japic.or.jp/pins/

