2024年度の介護報酬改定は、居宅介護支援の現場に大きな変革をもたらしました。
特に、居宅介護支援費(II)の算定要件が大幅に緩和されたことは、多くの介護関係者にとって大きな関心事となっています。
本稿では、今回の算定要件変更の背景、具体的な変更点、そしてそれが介護現場にどのような影響を与えるのかについて、詳細に解説していきます。
まず、居宅介護支援費(II)について簡単に説明します。
居宅介護支援費は、利用者が適切な介護サービスを受けられるように、ケアマネジャーがケアプランを作成したり、サービス事業者との連絡調整を行ったりするなどの支援に対して支払われる報酬です。
居宅介護支援費(II)1名の介護支援専門員がより多くのケース(件数)を担当する事業所に対して支払われるもので、効率的な運営を促す目的があります。
居宅介護支援費(Ⅰ)は、介護支援専門員1名あたりの取り扱い件数が「45件未満」の場合に対象となりますが、居宅介護支援費(Ⅱ)になれば取り扱い件数が5件増え、50件未満であれば報酬単位数は同じです。
業務を効率化することにより、ケースを多く担当することができるため、事業所の増収にもつながります。
これまで、居宅介護支援費(II)を算定するためには、国の「ケアプランデータ連携システム」の活用が必須とされていました。
このシステムは、ケアプランに関する情報を一元的に管理し、関係機関との情報共有を円滑に行うことを目的としています。
しかし、システムの操作性や機能面での課題も指摘されており、現場からは改善を求める声が上がっていました。
今回の算定要件緩和の背景には、介護現場の多様なニーズに応えるとともに、ケアマネジャーの負担軽減を図るという目的があります。
これまで国のシステム一択であった運用を見直し、一定の要件を満たす市販のシステムも認めることで、より柔軟な運用が可能となります。
2025年4月7日に厚生労働省が発出した2024年度介護報酬改定に関するQ\&A(Vol.13)において、「ケアプランデータ連携システムと同等の機能とセキュリティが認められたシステムであれば、居宅介護支援費(II)の算定が可能である」と明示されました。
また、対象となる市販システムも公表され、変更点が現場関係者へ広く周知されています。
この方針は、昨年10月に開催された有識者会議において、厚生労働省がすでに示していたものです。
これまで国のシステム一択であった運用を見直し、一定の要件を満たす市販のシステムも認めるという、より開かれた枠組みへと変更されました。
この方針は、昨年の10月に開催された有識者会議で厚生労働省が既に示していたものであり、これまで国のシステムのみに限られていた運用が、一定の要件を満たす市販システムも認められるという枠組みへと変更された形になります。より「開かれた」形になったといってよいでしょう。

今回の変更で最も重要な点は、国の「ケアプランデータ連携システム」だけでなく、「ケアプランデータ連携システムと同等の機能とセキュリティを有する」と認められた市販のシステムも、居宅介護支援費(II)の算定要件を満たすとされたことです。
これにより、ケアマネジャーは、自事業所の状況やニーズに合わせて、より柔軟にシステムを選択できるようになりました。
厳正な審査の結果、現時点で「ケアプランデータ連携システムと同等の機能とセキュリティを有する」と認められたのは、株式会社カナミックネットワークが提供する「カナミッククラウドサービス」のみであるようです。
しかしながら、厚生労働省は、ケアプランデータ連携システムと市販のシステムとの間で、円滑なデータ連携を可能にするためのAPIの開発も積極的に進めています。
したがって、今後はカナミックネットワークだけでなく、他社ソフトとの連携も認めていく方向になるかもしれません。
今回の算定要件緩和は、介護現場に様々な影響を与えることが予想されます。
これまで、居宅介護支援費(II)を算定するためには、国のシステムを利用するしかありませんでした。
しかし、今回の変更により、ケアマネジャーは、自事業所の状況やニーズに合わせて、より使いやすいシステムを選択できるようになりました。
これにより、業務効率化や利用者へのサービス向上に繋がることが期待されます。
市販のシステムの中には、国のシステムよりも操作性が優れていたり、様々な機能が搭載されていたりするものがあります。
これらのシステムを導入することで、ケアマネジャーの業務負担が軽減され、より多くの時間を利用者とのコミュニケーションに費やすことができるようになるかもしれません。
厚生労働省がAPIの開発を進めていることで、将来的には、国のシステムと市販のシステムとの間で、円滑なデータ連携が可能になることが期待されます。
これにより、情報共有がスムーズになり、関係機関との連携がより一層強化されるでしょう。
市販のシステムを導入する場合には、初期費用や月額利用料が発生する可能性があります。
事業所は、システムの導入によって得られるメリットとコストを慎重に比較検討する必要があります。
市販のシステムを利用する場合には、セキュリティ対策が非常に重要になります。
個人情報などの機密性の高い情報を取り扱うため、信頼できるシステムを選定し、適切なセキュリティ対策を講じる必要があります。
これは居宅介護支援費(Ⅱ)の算定要件にかかわらず、基本的な考え方として大変重要となります。

今回の居宅介護支援費(II)の算定要件緩和は、介護現場に新たな可能性をもたらすものです。
ケアマネジャーがより柔軟にシステムを選択できるようになることで、業務効率化や利用者へのサービス向上に繋がることが期待されます。
一方で、国のシステムには不具合が生じることが多いのも実情です。
介護現場の現状を鑑み、利用者、ケアマネジャー双方にとって、より使いやすく、信頼性の高いシステムが構築されることを切に願うばかりです。
厚生労働省は、今後も引き続き、介護現場の意見を聞きながら、より良い制度設計を進めていくことが求められます。
また、市販のシステムを提供する事業者も、介護現場のニーズに応えるべく、システムの改善や機能追加に努める必要があります。
今回の変更が、介護現場にとってプラスに働くことを期待し、今後の動向を注視していきたいと思います。