介護経営に役立つフレームワーク①

こんにちは!

今回は、介護経営を行う上で役に立つフレームワークを3つご紹介いたします。

SWOT分析

SWOT分析という言葉をご存知でしょうか?

ビジネスフレームワークについて少しでも興味のある方であれば、ご存知の方も多いことでしょう。

今回は、介護施設が競合他社との差別化を図るための分析手法であるSWOT分析について解説します。

「SWOT分析」の目的は、介護事業所の強みや弱みを分析し、他者とも差別化を図って生き残っていくための戦略を立てることです。

【内部的要因】

●Strength(強み)
「訪問看護において専門の研修を修了した看護師を配置している」「ターミナルケアの経験が豊富である」などが挙げられます。

●Weakness(弱み)
「スタッフが不足しているため、理想としたサービス提供が不可能である」「スタッフの教育、研修を行えず、サービスの質や利用者様の満足度に悪影響がある」などが挙げられます。

【外部的要因】

●Opportunity(機会)
「医療機関の入院短縮化に伴い、在宅看護のニーズが増大している」「自宅で最期を迎えたいと願う人(家族)が増えている」等といったことが挙げられます。

●Threat(脅威)
「競合他社の増加により利用者様の獲得競争が激化している」「介護分野での慢性的な人材不足により、介護職員の確保が難しくなっている」などが挙げられます。

まずは、自社のステーションはどのような強みがあるのかを話し合い、確認することが重要です。強みが1つもない事業所はないはずです。仲間同士意見交換していくつも拾っていきましょう。

同時に「弱み」分析も重要ですね。弱みがサービスの根幹にかかわる内容であれば、すぐさま改善していかなければならないからです。弱みがない事業所も存在しません。少々のことは気にせず、むしろ「強みを更にブラッシュアップする」という戦略も有効かもしれません。

同時に、介護業界を取り巻く情勢を分析することも必要です。

例えば「入院医療機関の入院日数短縮化」であれば、それは訪問看護のニーズという「機会」につながります。いわばビジネスチャンスである、ということです。逆に「業界的に人材不足が深刻である」というのは「脅威」になりますが、その状況下で自社の魅力をどう打ち出していくかや、人材定着に向けてどう社内整備していくかという思考に結びつくでしょう。

上記の観点から、訪問看護等においてSWOT分析を行うことは大変有意義であり、有効です。いきなりの分析が難しいのであれば、まずは「自社の強みは何か」を分析するところからはじめてみてはいかがでしょうか?

アンゾフの意思決定理論

アンゾフの意思決定論は、社会福祉士国家試験にも出題される重要なフレームワークで、アメリカの経営学者であるイゴール・アンゾフという人が提唱しました。

「意思決定」といいますと、もっぱらビジネスの世界でよく聞かれる言葉ですが、そもそも私たちは誰でも、日常生活において数えきれないほどの「意思決定」をします。

例えば買い物に行くにしても「スーパーにするかコンビニにするか」「どういう道順で店まで行くか」「大根がほしいが、どの大根を選ぶか」等々です。基本的に意思決定を行わない人間は存在しないはずです。

経営学者であるアンゾフは、会社組織において経営層・ミドル層・ロワー層がそれぞれ行う意思決定の特性があり、3つに区別されると説いています。

戦略的意思決定

主としてトップマネジメント(経営者)が行う意思決定です。資金調達や経営資源の配分、経営理念の策定などの重要意思決定を行います。

管理的意思決定

主として管理職(部長・課長・管理者など)が行う意思決定です。経営者の方針や指示を受けて、従業員の採用やシフトの作成、指導等を行うのが管理的意思決定となります。

業務的意思決定

主として一般社員などのロワーマネジメントが行う意思決定です。いわゆる日常業務(サービスの提供、記録の作成など)を行うことです。

近年ではインターネットの発達などにより、管理職などが創造的な意思決定を行うといった横断的な意思決定もありますが、基本的には「社長には社長の仕事」「管理職は相応の仕事」を遂行することになります。

社長が雑用等に専念しているような環境は、決してあるべき姿ではないのです。

もちろん、規模の小さい事業所などであれば、社長であっても訪問看護師としてサービス提供しているケースもあることは重々理解しますし、それを否定することはできません。

しかし組織マネジメントとしては、社長は社長にしかできない仕事があるはずです。あまりよい表現ではないかもしれませんが、ロワー層でも対応可能な仕事は任せればよいのです。そうでないと、社長としての本来業務が疎かになり、重要な意思決定が求められたときに初動が遅れることになりかねません。

ですので、それを脅かしてしまうような職場環境であれば、何らかの改善が必要であるといえます。

今すぐ改善することは難しくても、特に経営者や管理者はこの3つの意思決定モデルについて念頭に置くだけでも、皆さんの普段の業務に役立つのではないでしょうか。

SECIモデル

SECIモデルは、日本の経営学者である野中郁次郎氏によって提唱されたものです。

人が持つ知識や経験などの暗黙知を形式知に変換し、その知識を組織全体で共有・管理するフレームワークのことです。

「暗黙知」とは、簡単にいえば「頭の中にある知識、言語化されていない知識」であり、「形式知」とはその逆で「外形化された知識、言語化された知識」といってよいでしょう。

SECIモデルは4つのプロセスを踏みます。訪問看護の実際の現場に即して解説しましょう。

Socialization(共同化)

暗黙知が他の人と共有されるプロセスです。

訪問看護でいえば、ベテラン看護師が新人看護師に対して、直接的な体験や観察を通じて知識を伝える場面などが想定されます。よく聞かれるオンザジョブトレーニング(OJT)や、最近はやりのシャドーイング(新人がベテランに同行して、よい方法をマネするなどして学ぶ)が考えられます。

Externalization(表出化)

個人の暗黙知を形式知に変換するプロセスです。

個人の頭の中にしか知識がないという「属人化状態」では、ステーション全体のノウハウは蓄積しません。この場合、知識を有するスタッフが退職してしまうとたちまち混乱を来たしてしまいます。マニュアルや手順書の作成や、特定の患者対応のケースを文書化し、スタッフ全員で共有する「ケーススタディ」が有効ですね。

Combination(連結化)

形式知を集めて新しい知識を生成するプロセスです。

例えば、看護部門と介護部門が定期的に会議を開き、効率的な業務オペレーションなどについて自由闊達に意見交換をし、共有することなどが挙げられます。このような取り組みをすることで、新たな発見や解決策が見つけやすくなります。

Internalization(内面化)

形式知を再び暗黙知に変換し、個々の実践に取り入れるプロセスです。

研修や教育プログラムを通じて得た「形式知」を、個人の日常の業務に活かしていくのです。看護技術研修等の受講を通じ、形式化された知識をさらに進化させて、自分のものとして吸収していく作業です。

このように、SECIモデルは介護事業運営において大いに役立つ考え方です。

反面、日々忙しくされている皆様にとって、これをすべて実践するのは困難でしょう。

着手できるところから無理なくはじめるというのも一案です。

もしよろしければ、一度SECIモデルについて研究してみてはいかがでしょうか。介護事業運営にきっと役に立つと思います。

いかがでしたでしょうか?

ビジネスフレームワークというと小難しい話に聞こえるかもしれませんが、実は現場においても大変役に立つものが多いです。

あすてるコラムでは、今後もこのような情報を定期的に発信してまいります。

どうぞご期待ください。

今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。