2025年のスタートにあたり、訪問看護をはじめとした介護事業所においてチェックすべき事項がたくさんあります。
今回はその中から「介護事業者の経営情報の報告義務化」について解説いたします。
ぜひ最後までお付き合いくださいませ!
こちらについては、2024年度介護報酬改定において全事業所について対応を求められ、経過措置期間を経て2025年から義務化されたものです。
「経営情報の報告」とはどのようなものなのでしょうか?
厚生労働省では3年に1度、「介護事業経営実態調査」を実施しています。
これは介護報酬改定前に必ず行われるもので、サービス事業者ごとの経営状況や人材の状況などを国に報告させるものです。
この調査で最も注目されるものの一つが「収支差率」というものです。
簡単にいいますと、介護サービスごとでどれくらい利益が上がっているかを公表するものなのですが、一般的に「利益が他サービスに比べて高い」サービスについては次回報酬改定で報酬が据え置かれる、あるいはマイナスになる傾向があり、その逆の場合は報酬がプラスとなる傾向があります。
介護報酬の改定について審議される機関は、皆さんもご存知の「社会保障審議会 介護給付費分科会」です。ここで審議された内容が報告され、厚生労働大臣が諮問→答申され、報酬改定の内容が決定されます。
諮問・答申は「儀式」であり、よほどのことがない限り分科会で審議決定された内容がイコール「介護報酬改定の決定事項」となります。
しかし、この実態調査はすべての事業所が協力しているわけではありません。
直近の実態調査(令和4年度)の有効回答率は48.3%にとどまっています。

有効回答率が半分に満たない状況では、介護業界の問題点を正確に測れないのではないかと、厚生労働省は考えたのでしょう。
そこで分科会で審議し、この介護経営実態調査を補完する観点から、今回全介護事業所に対して「経営情報の報告」を求めることとし、2024年介護報酬改定に盛り込まれることになりました。
実際は2024年4月から施行されていますが、実際の報告は2025年より「義務化」されます。
厚生労働省HPには、「介護サービス事業者の経営情報の収集及びデータベースの整備をし、収集した情報を国民に分かりやすくなるよう属性等に応じてグルーピングした分析結果を公表する制度を、令和6年(2024年)4月より創設します」と記載されています。
報告の媒体は「介護サービス事業者経営情報データベースシステム」です。
厚生労働省「介護サービス事業者経営情報データベースシステム」
https://www.mhlw.go.jp/stf/tyousa-bunseki.html
以下は介護サービス事業者経営情報データベースシステムのイメージ図ですが、各介護サービス事業者がこのシステムから経営情報を報告し、厚生労働大臣(厚労省)がこの情報を整備し、経営情報の把握や分析を行い、結果を国民に公表、ひいては次回介護報酬改定に反映されるというものです。

介護サービス事業者は、以下のURLにログインし報告するわけですが、ログインには「GビズID」の取得が必要になります。
初年度の経営情報報告の締め切りは、2025年3月末(2024年度 初年度報告分)になります。
報告内容については、サイトにおいて下記のように紹介されております。
(※)は任意の項目
・事業所又は施設の名称
・法人等の名称
・法人番号
・介護事業所番号
・介護事業所で提供しているサービスの種類
・法人等の会計年度末
・法人等の採用している会計基準
・消費税の経理方式
介護事業収益
うち施設介護料収益(※)
うち居宅介護料収益(※)
うち居宅介護支援介護料収益(※)
うち保険外収益(※)
介護事業費用
うち給与費
うち給与
うち役員報酬(※)
うち退職給与引当金繰入(※)
うち法定福利費(※)
うち業務委託費
うち給食委託費(※)
うち減価償却費
うち水道光熱費
うちその他費用
うち材料費(※)
うち給食材料費(※)
うち研修費(※)
うち本部費(※)
うち車両費(※)
うち控除対象外消費税等負担額(※)
事業外収益(※)
うち受取利息配当金(※)
うち運営費補助金収益(※)
うち施設整備補助金収益(※)
うち寄付金(※)
事業外費用(※)
うち借入金利息(※)
特別収益(※)
特別費用(※)
法人税、住民税及び事業税負担額(※)
以下の職種ごとの人数(常勤・非常勤別)
管理者
医師
歯科医師
薬剤師
看護師
准看護師
介護職員(介護福祉士)
理学療法士
作業療法士
言語聴覚士
柔道整復師・あん摩マッサージ師
生活相談員・支援相談員
福祉用具専門相談員
栄養士・管理栄養士
調理員
事務職員
その他の職員
上記のうち介護支援専門員・計画作成担当者
上記のうち訪問介護のサービス提供責任者
上記の職種ごとの給与及び賞与(※)
複数の介護サービス事業の有無
介護サービス事業以外の事業(医療・障害福祉サービス)の有無
医療における事業収益(※)
医療における延べ在院者数(※)
医療における外来患者数(※)
障害福祉サービスにおける事業収益(※)
障害福祉サービスにおける延べ利用者数(※)
これは、事業者で契約されている顧問税理士等の協力が不可欠になります。
いずれにせよ、全サービスにおいて報告が義務化されておりますので、ご確認いただけますと幸いです。
2024年介護報酬改定が動き出して、早いもので9か月、訪問看護などの医療系サービスについては6月施行ですから、半年以上が経過したことになります。
ようやく落ち着いてきたかと思えば、2025年はほかにも新たに動き出す内容がたくさんあります。大変ですよね・・・
あすてるコラムでは、そのような重要な情報について定期的に発信し、介護サービス事業者様の運営に少しでもお役立てできればと考えております。
この「最新情報」は、今後複数回にわたって連載したいと思います。
2025年も、あすてるコラムにご期待ください!
今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。