指定難病や自立支援医療などの医療費助成制度において、自己負担上限額管理票は患者様の医療費負担を適切に管理するための重要なツールです。
本記事では、医療機関の実務担当者の方々に向けて、管理票の活用方法から最新の運用まで、実践的な情報をご提供いたします。
指定難病や自立支援医療の患者様への医療費助成は、高額療養費制度と連携しながら、きめ細かな支援を提供する制度です。この制度により、患者様の負担軽減と医療機関の事務効率化を支えているといっても過言ではありません。
医療費助成制度は、高額療養費制度と密接に関連しながら運用されています。患者様の経済的負担を軽減するため、所得に応じた自己負担上限額が設定されています。
しかし患者様に設定されている上限額は、訪問看護ステーションだけに適用されるものではなく、関係する医療機関や薬局も関わります。ですので、患者様の請求額を正しく計上するために自己負担上限額管理票を活用することになります。
たとえば指定難病の場合、所得区分が「一般所得Ⅰ」の場合、自己負担上限額は月額10,000円に設定されています。
この上限額を超えた医療費については、医療費助成の対象となり、患者様の実質的な負担が軽減されます。高額療養費制度との併用により、さらなる負担軽減が可能となるケースもあります。
訪問看護ステーションをはじめとする医療機関では、この制度を正確に理解し、患者様に適切な説明を行うことが求められます。特に注意が必要なのは、入院と外来で異なる上限額が設定されている場合です。
このような場合、自己負担上限額管理票に金額を正確に記録し管理することが不可欠となります。
自己負担上限額管理票の活用や管理は、医療機関と患者様双方にとって重要です。
重要性の1つ目として、請求事務の効率化と返戻レセプトの削減が挙げられます。
管理票を適切に運用しないと、患者様の負担額を正確に把握し、保険請求の精度を向上させることはできなくなります。
患者様側の重要性としては、医療費の予算管理がしやすくなることが挙げられるでしょう。
月々の医療費の上限が明確になることで、経済的な不安を軽減し、必要な医療を継続的に受けやすい環境を整えることが期待できます。
実際には、複数の医療機関を受診する患者様の場合、それぞれの医療機関での自己負担額を管理票に記録することで、月額上限に達した時点で追加の自己負担が発生しないよう適切に管理することができるわけです。

自己負担上限額管理票の正確な記入は、医療費助成制度の適切な運用の基盤となります。各項目の記入方法と、特に注意が必要な点について詳しく解説します。
自己上限額管理票は、1ヶ月の自己負担が上限額を超えることがないよう、医療機関や薬局の窓口で確認するために使 用するものです。 認定された疾病で受診される際は、医療受給者証とともに毎回提示が必要です。管理票の提示がないと、自己負担上限額の累計を確認できないため、自己負担上限額を超えて医療機関の窓口で請求を受けることがあります。
実際の医療機関の窓口における支払いについて、例を挙げて説明しましょう。
例)社会保険(3割) 難病受給 所得区分・一般所得Ⅱ 自己負担上限額5,000円 の場合
下記の表は、ある月に医療機関等を使用した際の医療費・自己負担の概要です。時系列ごとにまとめると下記のようになります。
医療機関等 | 医療費 | 保険 | 自己負担(2割) | 累計額 | |
1月5日 | A診療所 | 10000 | 7000 | 2000 | 2000 |
1月10日 | B訪問看護ステーション | 5000 | 3500 | 1000 | 3000 |
1月10日 | C薬局 | 2500 | 1750 | 500 | 3500 |
1月22日 | A診療所 | 10000 | 7000 | 1500 | 5000 |
1月22日 | C薬局 | 2000 | 1400 | 0 | - |
上記がすべて指定難病にかかる治療等で受診・サービス利用したと仮定すると、難病にかかる自己負担額は保険分の2割負担になります。
上限は5000円ですので、自己負担金額を「5000円に達する」まで記載します。
右横の「累計額」の記載は、間違いやすいのでミスがないようにしましょう。
1月22日のA診療所受診に伴う自己負担額は、本来なら医療費10000円の2割負担のため2000円となるはずですが、実施は上限の5000円の残り1500円の負担となりますので、1500円で打ち止めとなります。ここを「2000円」と記載しないようにする必要があります。
同日にC薬局で医療費2000円がかかっていますが、すでにその前のA診療所にて自己負担上限に達しているため、自己負担額の記載は不要(0円)となります。
なお、上限管理票に記載する自己負担額については、10円未満を四捨五入します。
訪問看護療養費明細書の自己負担額の端数処理は「1円未満を四捨五入」としますが、上限管理票では異なりますので、併せて注意しましょう。
上記のように記載をするわけですが、正しい金額を記載するためには上記のほか、関係する医療機関としっかり連携して、正しく自己負担額を記載することが大変重要です。
これを怠ると完全に請求額を間違えてしまい、結果的に返戻が発生することになりかねません。
他にも事例はさまざま考えられますが、基本的な考え方は上記の通りです。
不明な点があれば、厚生局や難病情報センターに問い合わせてみるのも一案です。
難病情報センター ホームページ
https://www.nanbyou.or.jp/entry/5460#kanrihyo

記入ミスを防ぐため、特に注意が必要な点とその対策について解説します。実際の医療現場での経験を基に、効果的な予防策を提案します。
よくあるミスの例としては、以下のようなケースが挙げられます。
– 自己負担額の累計計算ミス(再掲)
– 医療機関印の押し忘れ
– 日付の記入ミス
– 他院での医療費の記載漏れ
などです。
これらのミスを防ぐため、十分な連携とダブルチェック体制の確立が重要です。具体的には、記入者とは別の職員が確認を行う体制を整えることで、ミスの発生を大幅に減らすことができます。
また、自己負担上限額の内容を確定させるには、他の医療機関・薬局・訪問看護ステーションとの連携が必要ですが、実際は月が変わらないと確定しないものです。
上限管理票は本来患者様が保管するものですが、書類の行方がわからなくなったりして、請求業務のタイミングで困ってしまうこともあります。
上限管理票の帳面をしっかり管理するよう促すとともに、他の医療機関等と連携して正しい上限管理ができるように努めなければなりません。しかも、これはサービスの利用が続く限り毎月発生するものです。ステーションによっては上限管理を必要とする患者様が相当数いて、管理が大変かと思います。しかしこの作業は大変重要ですので、事務員1名で抱え込まずに訪問看護師と役割分担などして、確実に対応できるようにしましょう。
本日は、指定難病や自立支援医療などの公費利用における「自己負担上限管理」の概要とその運用方法、注意点などについて解説いたしました。
今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。
次の投稿をどうぞお楽しみに!!