訪問看護の長時間訪問看護加算とは【介護保険・医療保険】

訪問看護における長時間訪問看護加算は、患者の状態に応じて長時間のケアが必要な場合に適用される加算です。

この加算は、介護保険と医療保険の両方で利用可能ですが、その内容や算定要件には違いがあります。

本記事では、長時間訪問看護加算の概要、メリット、算定要件、そして実際の運用事例について詳しく解説します。

長時間訪問看護加算とは?概要とメリットをわかりやすく解説

長時間訪問看護加算は、通常の訪問看護よりも長時間のケアが必要な患者に対して適用される制度です。

この加算により、患者は必要な時間のケアを受けられ、訪問看護ステーションは適切な報酬を得ることができます。

介護保険と医療保険で適用条件が異なり、それぞれのメリットや注意点があります。

長時間訪問看護加算の定義

長時間訪問看護加算とは、通常の訪問看護の時間を超えて長時間のケアを提供した場合に算定できる加算のことです。

この加算は、患者の状態や必要なケアの内容に応じて、より長時間の訪問看護が必要な場合に適用されます。

具体的には、1時間30分を超えて訪問看護を行った場合に、介護保険・医療保険ともに算定可能す。

この加算により、訪問看護ステーションは長時間のケアに対する適切な報酬を得ることができ、患者は必要な時間だけケアを受けることができます。

例えば、人工呼吸器を使用している患者や、複雑な褥瘡処置が必要な患者などは、通常の訪問時間では十分なケアが行えない場合があります。

このような患者に対して、長時間の訪問看護を行ったステーションを評価する観点から、長時間訪問看護加算が設けられています。

介護保険と医療保険における違い

長時間訪問看護加算は、介護保険と医療保険の両方で適用可能ですが、その内容や算定要件には違いがあります。

算定要件

1回の訪問で1時間30分を超えての訪問看護を行った場合

対象者

要介護者または要支援者で、以下の疾患に該当する方

・在宅悪性腫瘍等患者指導管理
・在宅気管切開患者指導管理
・気管カニューレの使用
・留置カテーテルの使用
・在宅自己腹膜灌流指導管理
・在宅血液透析指導管理
・在宅酸素療法指導管理
・在宅中心静脈栄養法指導管理
・在宅成分栄養経管栄養法指導管理
・在宅自己導尿指導管理
・在宅持続陽圧呼吸療法指導管理
・在宅自己疼痛管理指導管理
・在宅肺高血圧症患者指導管理
・人工肛門、人口膀胱の設置
・真皮を越える褥瘡
・週3日以上の点滴注射

加算額
介護保険

指定訪問看護ステーションの場合 300単位/日

病院または診療所(みなし指定)の場合 300単位/日

なお、加算単位は介護予防訪問看護も同額になります。

医療保険

1. 算定要件:1回の訪問で90分以上の訪問看護を行った場合

2. 加算額:5,200円/日

よくある質問:算定に関する疑問

介護保険と医療保険の長時間訪問看護加算を同時に算定できますか?
いいえ、介護保険と医療保険の両方で当該加算を算定することはできません。
医療保険の特別管理加算は、毎回の訪問で算定できますか?
いいえ、週1回までの算定制限があります。ただし、要件を満たせば他の加算と併算定することは可能です。
長時間訪問看護加算の算定で、訪問時間は厳密に計測する必要がありますか?
はい、訪問時間は正確に記録する必要があります。適当に訪問看護の時間を管理することは「不正請求」の温床になりかねません。
複数の看護師で訪問した場合、それぞれの時間を合算して長時間訪問看護加算を算定できますか?
いいえ、複数の看護師が同時に訪問した場合でも、実際の訪問時間で判断します。個々の看護師の時間を合算という意味ではありません。
ちなみに、職種に関わらず同一の単位数を算定することができます。例えば、正看護師・保健師・准看護師のいずれかの職種の者が訪問されても、加算単位数は変わりません。ただし、療法士等が訪問した場合は、たとえ1時間30分を超えてサービス提供したとしても、長時間訪問看護加算は算定できません。
利用者が長時間訪問看護加算を希望しない場合はどうすればよいですか?
利用者の意向を尊重しつつ、長時間のケアが必要な理由を丁寧に説明します。それでも希望しない場合は、通常の訪問看護で対応し、必要なケアを複数回の訪問で提供することを検討します。
加算の内容に関わらず、利用者やご家族が加算算定に同意しない場合は算定できませんが、前述の通り加算を算定する必要性をしっかり説明することは重要です。場合によっては、主治医やケアマネジャーの協力も有効かもしれません。

まとめ

長時間訪問看護加算は、介護保険と医療保険の両方で利用可能です。この加算を適切に算定することで、患者への質の高いケア提供と、訪問看護ステーションの経営安定化の両立が期待できます。

1. 患者のニーズに合わせた適切な加算の選択

2. 質の高いケア提供のための体制整備

3. 多職種連携の強化と地域資源の活用

4. 家族支援プログラムの充実

5. スタッフの専門性向上のための継続的な教育

長時間訪問看護は、単なる利用者の身体的負担の軽減というメリットだけでなく、利用者のQOL向上と在宅生活の継続を支える重要なものです。

例えば、ALS患者へ訪問では、人工呼吸器管理、褥瘡予防、リハビリテーション、家族指導など、包括的なケアを一度の訪問で提供することが可能となります。

これにより、患者の状態安定と家族の安心につながり、結果として在宅生活の長期継続が実現するかもしれません。

また、精神科訪問看護における長時間訪問では、症状観察、服薬管理、社会生活技能訓練、家族支援など、多岐にわたるケアを十分な時間をかけて提供できます。

これは、精神疾患患者の地域生活支援と再入院予防に大きく寄与します。

一方で、加算の算定には適切な管理と正確な記録が不可欠です。算定要件の確認も大変重要であり、認識を間違えたことで不正請求を疑われるようなことがあってはいけません。

また、患者や家族に対しても、加算の意義や自己負担額について丁寧な説明を行い、理解と同意を得ることが重要です。

今後、高齢化の進展や在宅医療のニーズ増加に伴い、長時間訪問看護の重要性はさらに高まると予想されます。

訪問看護ステーションは、この加算を効果的に活用しつつ、常に患者のニーズに寄り添ったサービス提供を心がけることが求められます。

そのためには、長時間の訪問看護サービスの依頼を受けても対応できるような人員体制が必要になります。

また、制度の運用状況や課題について、現場からの声を積極的に発信していくことも重要です。

これにより、より実態に即した制度改善につながる可能性があります。

最後に、長時間訪問看護加算は、訪問看護サービス全体の中の一部分に過ぎません。

この加算を適切に活用しつつ、他の加算や基本的なサービスとのバランスを取りながら、総合的な質の高い訪問看護を提供することが、患者・家族の満足度向上と事業所の発展につながる鍵となります。

訪問看護に携わる全ての方々が、この加算への理解を深め、適切に活用することで、患者のQOL向上と在宅医療の発展に貢献することを期待しています。

今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。