訪問看護における「緊急訪問看護加算(医療保険)」とは?

本日のテーマ

訪問看護サービスにおいて、利用者様の急変等により緊急訪問をするケースは多いことと思います。

介護保険でも医療保険でも、緊急時に対応したサービスについて加算の算定が可能になっておりますが、似たような言葉もありわかりにくいのが実情です。

今回は、緊急時の対応について評価する加算の一つである「緊急訪問看護加算」について解説いたします。

なお、緊急訪問看護加算は医療保険の加算であり、介護保険の「緊急時訪問看護加算」とは異なりますので、ご留意いただいた上でお付き合いいただけますと幸いです。

訪問看護の「緊急訪問看護加算」とは?

緊急訪問看護加算は医療保険(訪問看護療養費)に対して算定される加算です。具体的には、訪問看護ステーションが主治医からの指示等に基づき、計画外の緊急訪問を行った場合に算定できる加算となります。

対象となる利用者の疾患や基本療養費の内容によって、「緊急訪問看護加算」と「精神科緊急訪問看護加算」の2種類ありますが、このあとご案内する要件等は両者に違いはありません。

緊急訪問看護加算の報酬額

今般の診療報酬改定では、緊急の指定訪問看護が適切に提供されるよう、緊急訪問看護加算についてはその要件及び評価を見直されることになりました。

これにより、同一月の緊急訪問看護加算の算定回数に応じて、1日につき1回に限り以下のいずれかの加算を算定することとなります。

緊急訪問看護加算(訪問看護基本療養費)

イ 月 14 日目まで 2,650 円
ロ 月 15 日目以降 2,000 円

となります。

今般の診療報酬改定により、1月の算定を「14回」で区切り、それを超えた(15回目以降)場合は加算が減額されることになりますので、注意が必要になります。

緊急訪問看護加算の算定要件

緊急訪問加算の算定要件は、下記の通りになります。今般の診療報酬改定に伴い盛り込まれた要件についても、併せてご確認いただけますと幸いです。

緊急訪問加算の算定要件

①訪問看護計画に基づき定期的に行う指定訪問看護以外であり、利用者や家族の緊急の求めに応じて、主治医(診療所・在宅療養支援病院の保険医に限る)の指示により、訪問看護ステーションの看護師等が訪問看護を行った場合

②主治医の属する診療所が他の医療機関等と連携して24 時間の往診体制及び連絡体制を構築し、利用者に「在宅療養移行加算1」を算定しており、主治医が対応していない夜間等において連携先の保険医療機関等の医師の指示により緊急に指定訪問看護を行った場合

③診療所または在宅療養支援病院が、24時間往診及び指定訪問看護により対応できる体制を確保し、24時間連絡を受ける医師、保健師・助産師・看護師または准看護師などの連絡担当者の以下情報を文書で提供している利用者であること

(記載すべき内容)
連絡担当者の氏名 連絡先電話番号等 担当日 緊急時の注意事項 往診担当医 訪問看護担当者の氏名等

④利用者や家族等からの電話等による緊急の求めに応じ、主治医の指示で緊急の訪問看護を実施した場合は、「日時」「内容」「対応状況」を訪問看護記録書に記録すること

⑤緊急訪問看護加算を算定する場合、その算定理由を「訪問看護療養費明細書」に記載する

となります。

上記で「在宅療養支援病院」とは、入院病床数が200床未満であり、通常の病院機能に加えて在宅療養をされる患者のために、定期的な訪問診療と365日対応可能な往診、訪問看護や入院ベッドの確保、介護連携、看取り等の体制を整備した病院です。地方厚生局に届け出て認可を受ける必要があります。(在宅療養支援)診療所でない病院の場合、在宅療養支援病院以外の主治医では当該加算を算定することはできません。

加えて、緊急訪問看護加算の算定は「計画外の訪問であること」「利用者・家族の求めに応じたものであること」が必要で、かつ主治医の指示があった場合でなければ算定ができないことにも注意が必要です。

さらに、緊急訪問看護加算を算定した場合には、その理由を療養費明細書に記載しなければなりません(これは今回の診療報酬改定により新設)。併せて確認しましょう。

緊急訪問看護加算の改定の背景と留意点

繰り返しになりますが、今回の診療報酬改定では緊急訪問看護加算に関する改定がなされました。この背景として、いわゆる「ナーシング型の有料老人ホーム」等において、自社で訪問看護ステーションを設置し、対象の患者様へ毎日訪問する事案が増えていることが挙げられます。必ずしも緊急性が高いとはいいがたいケースでも、ご本人やご家族から了承を得たことにして緊急訪問とし、加算を算定していることが問題視されたわけです。

ほとんどのステーションではルールに基づいて対応されているわけですが、一部のステーションでは月に何度も緊急訪問を「している体で」加算を算定しているところもあるようです。

緊急訪問看護加算は、先ほどもご案内の通り「利用者(家族)の求めがある」ことが算定の前提として存在します。これを無視して勝手に訪問し、緊急加算を算定(回数を稼ぐような行為)するのはダメだ、というわけです。

今回の措置は、闇雲に当該加算を算定することに対して一定の抑制をかける形となりました。これはやるせないところもありますね。

その患者様の状況からして「緊急性」を要するか否かを判断できるのは、現場であるはずです。当然ながら、その患者様の状態は現場の方々が一番よく把握しているはずです。

それなのに、その場を見ていない第三者が「緊急性」の是非についてあれこれ言ってくるのは少々お門違いではないか、とも思います。

この厳しい措置は、やみくもに加算を算定するごく一部の事業所が存在することによるものといってよいと言っても過言ではありません。まさに診療報酬の「適正化」が図られることを目指していると受け取れます。

確かに、グレーな形で加算を算定することは望ましくないことは当然であり、ましてや不正な形で算定することなどあってはなりません。

しかし、理屈は理解できても、まじめにサービスを提供する大多数の事業所にとってはまさに煽りを食った形になり、何ともやるせない部分もあります。

緊急訪問看護加算を算定する際の留意点

・月の算定回数を「14回」で区切っており、14回を超えると報酬額が下がってしまうこと。

・算定要件は「計画外の訪問であること」「主治医の指示に基づくものであること」「診療上あるいは在支病の主治医であること」「算定する場合はその理由を明細書に記載すること」などがありますので、この加算を算定する場合は留意する必要があります。

まとめ

今回は医療保険の「緊急訪問看護加算」について解説いたしました。

介護保険の「緊急時訪問看護加算」と似た言葉ですが、混同しがちです。

両者はそれぞれ要件が異なることを、十分理解する必要があります。

また、緊急訪問看護加算は今般の診療報酬改定により大きく変わっています。

これまでのやり方で対応して請求した場合、返戻になってしまいかねません。制度を正しく理解しないと運営に支障をきたすことにもなりますので、注意しましょう。

今回も最後までお付き合いいただき、誠にありがとうございました。

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